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新型コロナウイルスとナッジ政策

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    1.ナッジ政策への期待  新型コロナウイルスの感染対策に、「ナッジ」政策はどこまで有効だろうか。 ナッジ政策というのは、政府が強権的に介入するのではなく、あるいは自由放任にするわけでもなく、やわらかい仕方で人々の行動に介入するような政策をいう。「ナッジ」とは「背中を押す」とか、「肘で横からつつく」といった意味で、私たちが日常生活において、他人にちょっと気を使って親切にふるまう仕方である。それを行政レベル・組織レベルで試みよう、というのがナッジ政策である。 例えば、肥満を防ぐために、スーパーやコンビニでは、大きなサイズの炭酸水を売ってはいけないことにする。あるいはレストランでは、大きなサイズの肉料理を割高にしたり、メニューの下の方に小さく表示したりする。こうした小さな政策を積み重ねていくと、私たちの食生活は、少しだけよい方向に向かうかもしれない。ナッジ政策は、人々の「選択の自由」を確保する一方で、社会全体を改善しようと企てる。 ではナッジ政策によって、私たちはいかにして新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことができるのか。どうも各国政府は、いまのところ、あまりよい政策アイディアを実行していないようである。けれども例えば、次のようなナッジ政策はどうであろう。   (1)  日本政府は人々に自粛を呼びかけている。とくに都心部では、人々の移動量を 8 割減らしたいと考えている。人々の移動を減らすためには、政府は上から権威主義的に自粛を要請するのではなく、例えば駅の自動改札で、機械的な制限を行ってはどうだろうか。 30 分ごと、あるいは 10 分ごとに、利用者の数が一年前の 2 割に達したら、改札を通過できないようにする、といった政策である。むろん、どうしても鉄道を利用しなければいけない人は、有人改札で手続きをする。このようにしてはどうだろうか。 (2)  別の政策案として、人々の往来が激しいスポットに電光掲示板を設置し、そこに「利用者数の増減データ」を示す、というのはどうだろうか。人々の移動量が一年前の同時期の 2 割以上になったら「赤信号(あるいは鬼の怒った顔)」を点滅、さらに「警戒音(サイレン)」を鳴らすという具合にすれば、人々は不安になって移動量を減らすかもしれない。 (3)  パチンコ店などの空間で、人が密集して集まることが