■相続税にリニャーノ原理を
ダニエル・ハリデー『財産を相続するということ 遺贈と正義の政治哲学』大澤津 / 原田健二朗監訳、阿部崇史 / 宮本雅也 / 辻悠佑 / 榊原清玄 / 石田柊訳、勁草書房 訳者のみなさま、ご恵存賜り、ありがとうございました。 格差について論じるとき、所得の格差に加えて、相続する財産の格差も問題です。相続税を累進的に引き上げて、公平な財産相続の制度を作っていく。そのために本書が提案するのは、保守的な発想と進歩的な発想の組み合わせたものです。 まず、自分の子どもに財産を相続させるときは、「相続税をゼロ」にする。しかし、自分の子どもが、自分の財産を孫に相続させるときには、相続税を課すことにする。さらに、その孫が、ひ孫に対して自分の財産を相続させるときは、追加で相続税を課していく。こうして相続税の税率を、継承される世代の数に応じて、累進的にしていく制度が望ましい、というのですね。 継承される世代の数に応じた累進的相続税という考え方は、かつてイタリアの財政学者リニャーノが提案したものでした。本書の著者も、基本的にこのリニャーノの考え方を支持しています。 しかしリニャーノ原理に基づいて相続税を課すことは、実際には難しいです。そこで、これに似た課税方法を考える必要がある、というのですね。 例えば株です。株式を相続する場合、そこにキャピタルゲイン税を課すことができます。株は、相続するときにはすべて売らなければならないことにして、そしてその利益に対してキャピタル・ゲイン税を課す。このような考え方ですね。 1970 年代に、ミードは累進的資産取得年税を主張しました。これは、資産に対する税率を、その資産を所有する期間の長さによって増大させていく、という提案です。この課税を実施すると、先祖代々受け継いできた土地に対しては、高率の資産税が課されることになるでしょう。すると、農地であれ森林であれ、土地は、ある程度先祖から継承したら、別の人に売った方がいい、ということになるかもしれません。この課税を逃れるに、ある共同体では、土地を相互に売り買いすることが、慣習になるかもしれません。税逃れの道は残されているでしょう。 けれども最近、アイルランドでは、この種の税制が採用されたのですね。これは調べてみる価値があります。 著者は、...