■怪物政治家、ミッテラン
吉田徹『ミッテラン 現代フランスを率いた理想と野望』中公新書 吉田徹さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。 とても興味深く読みました。政治家というのは、政治信条で動くのではない。それでも大きな政治的変革を成し遂げることができる。ミッテランという政治家は、そういう怪物だというのですね。 ミッテランは、フランス大統領を二期務めます。最初は社会党から立候補して、大統領になる。そして社会党の政策を推進した。ところが、途中から真逆に向かって、新自由主義の政策を推進していく。ミッテランは、そのようなことができてしまった。 これは、あまりにも政治信条のなさを示していると思います。「政治屋」と揶揄する人も多いようですね。しかし権力を保持できるなら、信条を変えてもかまわないと発想するのがミッテランです。 社会党の長老モレは、ミッテランが社会党の党首になったとき、次のように言いました。「彼は社会主義者になったのではなく、社会主義者のように喋ることを学んだだけであって、これは無視しえない違いなのだ」と (133) 。 ミッテランのように、ある思想の言葉を巧みに使う政治家は、どの政党にもいるでしょう。学者の場合も、状況は似ていると思いました。マルクス主義について雄弁に語るのだけれども、ぜんぜんマルクス主義に信条を抱いていない、というような。 他方でミッテランは、 46 歳( 1974 年)のときに、 19 歳のアンヌと恋をします。そしてそれから、 30 年以上もいい関係を続けるのですね。 そしてミッテランが 58 歳のときに、一人娘のマザリーヌを授かっています。これはミッテランにとって第二の家族なのですが、その詳細について、なんと娘のマザリーヌが後に哲学教員になって、自分の父(ミッテラン)と母(アンヌ)のあいだの大量のラブレターと日記をそれぞれ公刊したというのですね。そしてこれらの資料は、当時の政治を知るうえで第一級の資料なのだと。 ミッテランは 80 歳で亡くなりますが、その直前にも、アンヌに対して熱烈なラブレターを書いています。とても驚きました。