■二宮尊徳と松下幸之助はリベラル
岸泰正『経営哲学と人間観 経営学者の形而上学的論理に対する批判的考察』中央経済社 岸泰正さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。 この本には、日蓮上人から稲盛和夫にいたるまで、著名な日本の経営者・経営思想家の 42 人のリストがあります。これを見ると、いろいろな思考を喚起されます。 日本で重要な経営思想は、仏教や儒教を背景にしているため、宇宙との関係で人間を捉える点が共通している、というのは興味深いです。宇宙と人間の関係を、どう捉えるのか。形而上学的ですね。 しかしそれ以上に、本書の最後まで読み進めると、日本の経営思想が、どこまでリベラルなのか(人間の個性と多様性を尊重するのか)、という問題を検討していて、これが興味深いですね。 246 頁の図 8-8 は重要です。鈴木正三、石田梅岩、渋沢栄一、稲盛和夫は、反リベラルだという評価ですね。これに対して二宮尊徳と松下幸之助は、リベラルだったという評価なのですね。 人間と宇宙の同一化を求める思想は、個人の違いを尊重しない傾向にあります。しかしそうした中で、どのようにして他者を尊重するのか。そのような哲学・経営思想を読み解くと、リベラルの価値が析出されます。 二宮尊徳と松下幸之助は、いずれもナショナリズムの道徳という観点から評価されがちですが、そこにリベラルな要素を読み込んで、リベラルなナショナリズム、リベラルな集団主義(会社主義)という立場として評価できる。これは思想研究の成果として、重要だと思いました。