投稿

9月, 2024の投稿を表示しています

■派遣労働者は自由か

イメージ
  大槻奈巳編『派遣労働は自由な働き方なのか』青弓社   大槻奈巳さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。   この本のタイトルがいいですね。 2017 年の厚生労働省の調査では、女性の大学等卒業者のうち、はじめて就いた職が有期・無期の派遣労働者の割合は、 15-19% でした。これに対して、男性の大学等卒業者の場合、 33-42% になるのですね。大きな違いです。 派遣労働者は、残業が少ないという特徴があります。 また派遣労働者の昇給については、男女の差はあまりないというのですね。 しかし、有期雇用の派遣労働者には、通勤手当が支払われていない可能性がある、というのは深刻です。 (139) では、派遣で働くことは、自由なのでしょうか。「いまの働き方に満足ですか」という質問に対して、「そう思う+ややそう思う」は 40% です。 また、正社員を目指したいか、という質問に対して、「そう思う+ややそう思う」は、男女ともに、約 60% です。 いまの働き方に満足せずに、正社員を目指している人たちが、実際に正社員になることができれば、派遣社員の働き方は、うまく機能していることになります。 派遣先の会社に対する不満については、男性と女性に大きな差があります。男性の派遣社員は、「定時に帰らせてほしい」とか「年次休暇を取りやすくしてほしい」といいます。しかし女性の派遣社員は、こうした問題に、それほど要求度が高くないですね。この結果は、意外でした。

■被爆者の体験を次世代に伝えていく責任

イメージ
  國部克彦 / 後藤玲子編『責任という倫理』ミネルヴァ書房   後藤玲子さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。    広島と長崎での原爆体験は、終戦直後から、厳しい情報統制のなかで消去されてきたのですね。被爆者の損害も、それに対する責任の主体も明らかにされないまま、すなわち、原爆投下の責任も国家の戦争責任も問われないまま、 10 年が経過したと。  被爆者は、死者に対する罪と責任の感覚をもちます。また被爆者は、恥の感覚をもつことを余儀なくされます。この罪の感覚、責任の感覚、恥の感覚は、本人の個人的で内面的な問題とされ、偶発的な私事であるとして葬られてしまった。被爆者は、原爆症、差別、貧困、孤絶、罪の意識、不安、心の傷、死の恐怖、子供の将来に対する不安など、さまざま意識をもちます。しかしそのような意識を、なぜ一身に担わなければならないのか。賠償とその請求の宛先を確定することによって、その苦しみを少し解除することができるでしょう。  責任を適切に帰責する。そのような責任の倫理は、重要です。被爆者の体験を想起して、記憶して、次世代に伝えていくことは、私たちに課せられた責任です。私たちはこのような責任を担うことで、平和な社会を築くことに貢献できます。