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■寄付は未来社会への投資

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  『寄付白書 2025 Giving Japan 2025 』日本ファンドレイジング協会   坂本治也さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。 ご論稿「寄付とは何か、寄付は何をもたらすか」を拝読しました。 寄付とは「公共的な贈与」なのですね。 一般に、公共的な次元では「正義の再分配」、私的な次元では「私的道徳感情(愛や慈悲など)に基づく贈与」という分類になるかと思います。ですが「寄付」はその中間の行為なのですね。 「正義」「寄付(公的な贈与)」「私的な贈与」。この三つがあって、もう一つは、私的な次元の「正義」もあるでしょう。すると全部で四つですね。「公的正義」「公的贈与 = 寄付」「私的贈与」「私的正義」。これらをどう組み合わせれば、最適な社会になるのか。これが問題です。  かつて明治神宮は、寄付によって作られました。私たち現代人も、寄付によって何か新たな文化を作ることができるかもしれません。  個人寄付の総額は、 2016 年に 7,756 億円でしたが、 2024 年には 2 兆 261 億円になりました。かなり伸びていますが、そのほとんどは「ふるさと納税」です。その一方で、寄付した人の割合は、ほとんど変わっていないのですね。人口の 45% 程度です。  アンケート調査で、「寄付に近い活動は何か」という質問があります。その答えとして、「被災地の応援のために、関連する商品を購入したり現地に旅行したりする」が 46.6% 、「地産地消の実践のために、地元の特産品を購入する」が 35.6% 。この他、「環境負荷・エネルギー・ CO2 の削減に配慮した商品やサービスを利用する」が 14.7% 。(これはこのようなサービスの提供が、情報としてあまり信頼されていないのではないか、と想像します。)「障がい者の雇用や収入につながる商品を購入する」が 30.6% 、でした。  もう一つ、「寄付は未来社会への投資だと思う」かどうか、という質問に対して、「そう思う / どちらかといえばそう思う」と答えた人は、約 60% だったのですね。四年前の調査と比べて増加しています。そして、「将来資産があれば、亡くなる前に一部を遺贈寄付してもよいと思う」と答えた人は、約 45% だったのですね。  これは新しいリベラルの考え方...

■体制に寄生する企業家たちをどうすべきか

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吉田昌幸『企業家像の経済思想』専修大学出版局   吉田昌幸さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。    企業家精神論の系譜学です。このテーマで、考えられるかぎり、最善の成果を出していると思います。枝葉の議論をうまく退けて、メインの系譜を浮かび上がらせています。十分な時間をかけて練られた構成と内容になっていて、初学者にもわかりやすく説明する工夫が随所にあり、全体の枠組みが骨太に構成されています。 とくに新自由主義的な視点が、この研究の一つの重要な柱になっていると思いました。とくに言及されてはいませんが、ドイツのオルドー学派的な、競争秩序の観点です。  それはカーズナーとボーモルの比較です。オルドー学派とは直接関係ありませんが、競争秩序の観点から、この二人に関する議論を興味深く読みました。  企業家の役割と機能とは、いったい何か。この問題を考えるときに、プロ野球の選手と比較する、というのは面白いですね。プロ野球選手の「気質」は、「負けず嫌い」である。その「活動内容」は、「打つ、走る、捕る、投げる」などである。そしてその「システムにおける役割・機能」は、「打者、走者、内野手、外野手、捕手、投手」などである。  同様に、企業家の「気質」は、「進取の気性、好奇心、抜け目なさ」などである。その「活動内容」は、「起業、イノベーション、金儲け」などである。では、企業家が経済システムにおいて果たす役割と機能は、何でしょう。実は、この問題に応えるためには、経済システムについての一定の思想ビジョンがないと、答えられないのですね。学説史を振り返ると、さまざまな論者が、さまざまなビジョンのなかに企業家を位置づけて、企業家の役割と機能を位置づけてきたのですね。  カーズナーの企業家論は、これまであまり重視されなかったのですが、本書では、その含意をさらに引き出して展開しています。( 57 頁の図 2-3 参照。)カーズナーの企業家精神は、不確実性の問題を避けて、価格の差をたまたま「 hunch (直感)」によって発見するという、その能力とその成果によって、企業家の価格調整機能を位置づけます。本書はさらに、カーズナー的な企業家精神によって、新たな(潜在的だった)サービスや能力が発見される、ということに注目して理論を展開しています。  ボ...