■シュンペーターの方法論をめぐって





只腰親和/佐々木憲介編『経済学方法論の多元性』蒼天社出版

執筆者の皆様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 シュンペーターは、『理論経済学の本質と主要内容』と『経済発展の理論』のあいだで、自分の方法論的な立場を変更したのか、という問題があります。この問題に対するマハループの解釈は誤りである、と塩野谷祐一は指摘しましたが、けれどもその塩野谷の解釈も、誤っているというわけですね。(佐々木論文)
 しかも、『経済発展の理論』の第一章と第二章以降では、やはり方法論的な視角が異なっている。第一章では、経済状態が「静態・循環」をなしている場合を想定していて、そこでシュンペーターは「相互依存関係の分析」を静学と呼び、それ以外を「動学」と呼んでいる。これは『本質』の方法論を基本的に踏襲しています。
 これに対して同書の第二章以降では、経済状態が「動態・発展」をなしている場合を想定して、そこではすべての方法が「動学」とみなされる。
 企業者は経済に内在しているけれども、その意味では他のプレーヤーと相互依存の関係にある。しかし、企業者の動機や制度は、「静態」の範囲の外部にある、と解釈するわけですね。何が経済の内生的要因で、何がその外生的要因であるのかは、分析の視角に依存するので、重要な点は、分析の視角を示すことにあるのでしょう。

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