■リップマンは新自由主義の立役者


山脇直司『分断された世界をつなぐ思想』北海道大学出版会


山脇直司さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

アメリカ発の公共哲学は、リップマンとデューイにさかのぼることができるのですね。とくにリップマンは、新自由主義の初期の立役者でもあり、関心をもちました。リップマンに関する研究は、もっとあってもいいと思います。

 リップマンは、岩波文庫で読める著書、『世論』(上・下)で知られています。この本は1922年に刊行されました。ではその後、リップマンはどんな本を書いたのでしょうか。

リップマンは、1928年に『幻の公衆』を書きますが、この本が邦訳されたのは2007年なのですね。遅いですね。1934年に刊行されたThe Good Societyは、翻訳がありません。1955年に刊行された『公共の哲学』は、2014年に邦訳されています。こちらもずいぶん遅いですね。

 つまりリップマンは、21世紀になるまで、日本でほとんど紹介されていなかったのですね。これは岩波文庫の一冊になった著者としては、異例なほど、研究されてこなかったということでしょう。なぜでしょう。

 おそらく20世紀の日本では、リベラリズム(新自由主義を含む)と公共哲学に対する関心が、アカデミズムにおいて、ほとんど湧かなかったということなのでしょう。しかしリップマンは、知性史の観点から、重要な人物であると改めて思いました。


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