■マルサスでたどる日本の経済学史

 



 

Gilbert Faccarello, Masashi Izumo, Hiromi Morishita eds., Malthus Across Nations: The Reception of Thomas Robert Malthus in Europe, America and Japan, Edward Elgar,2020/4/20

 

出雲雅志さま、森下宏美さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

本書は、十数年に渡る国際共同研究の成果です。13名の執筆者で、マルサスが第一次世界大戦までの期間に、国際的にどのような影響力を持ったのかについて、丹念にたどっています。長年の研究成果をこのような大著として纏められましたことに、心より敬意を表します。

出雲さまと森下さまの論文は、最後の第九章として、二人の共著論文として収められています。全体で48頁の大作であります。内容は、日本におけるマルサスの影響をたどるものです。マルサスという言葉がいつ日本語で印刷されたのか。それは辞典項目や、あるいは他の翻訳書のなかに現れる場合とか、いろいろな形態があるわけですが、そういった出来事を丹念にたどるという、気の遠くなるような作業の成果ですね。マルサスからたどった日本経済学史の再構成、になっています。

その中で、幸徳秋水や北一輝などの思想家/革命家も、マルサスに言及して持論を展開しているというのは、興味深いです。進化と人口と経済発展という、大きな問題が、マルサスをつうじてこのように細かく辿ることができるということに、驚きました。

 


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