■うつ病から逃れるために

 


ヨハン・ハリ『うつ病 隠された事実 逃れるための本当の方法』山本規雄訳、作品社

 

作品社編集部さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

ヨハン・ハリは、英国生まれのジャーナリストで、これまで国際人権団体のアムネスティの「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」に、二度も選ばれました。

 前著の『麻薬と人間 100年の物語』は、とても興味深く読みました。この本はビリー・ホリデイの人生に迫る力作であり、映画化されました。ビリー・ホリデイを演じた主演女優は、ゴールデン・グローブ賞(ドラマ部門)の主演女優賞を受賞されました。

 そして本書は、うつ病に関する本です。薬が効くのはほんのわずかな人たちで、原因は社会的絆の喪失にあるのだから、その絆をもう一度結び直すことがすぐれた処方になる、というのですね。

 うつ病になる原因は、意味ある仕事との断絶(所得が低いほど、うつ病になりやすいのですね)、他の人との絆の断絶、意味ある価値観との断絶(物質的な欲求や地位への欲求が高い人ほど、うつ病になりやすい)、子ども時代のトラウマ、尊敬される地位との絆の断絶、自然との絆の断絶、希望に満ちた未来/安定した未来との絆の段節、という七つにまとめられています。

 これらの原因を解決するためには、再び、絆を取り戻す、自然を取り戻す、などの実践が重要なのですね。この本には、さまざまな実例が紹介されていて、どうやってそのような絆を回復していくのか、実感をもって理解できます。

 欧米人は個人主義なのでうつ病になりやすい、ということですが、ではアジア諸国ではどうなのでしょうか。絆を取り戻すために、個人と社会はどのように対応すべきなのか。考えるキッカケになりました。


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