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■持続可能な消費のガイドが必要だ

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藤原なつみ『サステナビリティの隘路 「持続可能な消費」の実現はなぜ難しいのか』新泉社   藤原なつみさま、ご恵存賜り、ありがとうございました。   まさにいま必要な研究であります。新しい研究を模索して拓いたと思います。そのフロンティア精神に、心から敬意を払います。 持続可能な消費は、いかにして可能かという問いは、ストレートな問題意識ですね。ところがこの問題に応えてくれる先行研究は、ほとんどないのですね。これが問題です。 本書は持続可能な消費を論じるために、「理論」として、「実践理論」を基礎に据えています。これは適切な選択であります。また、アンケート調査や、インタビュー調査によって、人々の環境意識を明らかにしています。 中心的な問題は、環境意識を高く持って、持続可能な消費行動をすることが難しい場合に、どうやって持続可能な消費を実現していくのかです。 この問題に応えるためには、弱い個人が、ある種のナッジに基づいて、あまり意識に負担をかけずに行動するとか、あるいは、環境問題に詳しいリーダーに追従して、フォロワーになる。例えば生活協同組合に加入して、組合の提案する消費を実践する。このような消費行動を組織化することで、持続可能な消費を実現していくことができるでしょう。 生活協同組合のような中間集団は、持続可能な消費のリーダーとして、重要な社会的役割を求められていますね。 本書は、「サステナビリティ迷子」という言葉を提案しています。私たちの実感を表すいい言葉だと思いました。私たちはどのようにすれば、持続可能な消費について迷わなくて済むのか。情報、考える時間、環境問題についての理解の欠如(その能力の限界)、地図そのものの欠如、などの要因があり、これらをすべて克服することが必要です。  大きな問題は、「これが持続可能な消費だ」と言えるような、消費に関するガイドや地図がないことでしょう。しかしそれでも、生活協同組合のような中間集団は、環境問題に立ち向かっています。私たちはその取り組みに希望を見出して、消費の問題を考えていくことができます。本書は悲観することなく、希望を語っています。ここからどうすべきか。橋頭保となる研究です。