■義務教育に1年間のバッファーを デンマークに学ぶ
坂口緑/佐藤裕紀/原田亜紀子/原義彦/和気尚美『デンマーク式 生涯学習社会の仕組み』ミツイパブリッシング
坂口緑さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
デンマークには、「10年生」という仕組みがあるのですね。小学校6年間、中学校3年間で、合計9年間。でも、そこにバッファーを設けて、10年間で卒業してもいいよ、ということになっている。次の段階に、急ぐ必要はないのですね。
実際、2021年には、コロナの影響もあるかもしれませんが、9年生の51%が、10年生になることを希望しました。
これはいいシステムですね。とくに、9年生から10年生にかけて、寄宿制の学校に変更して通う人たちがいる。海外の高校に1年間行くこともできますね。これは語学をマスターするためにもいいシステムです。
また、デンマークの大学には、「学生手当」という制度があるのですね。ベーシックインカムのような制度です。これもいい制度です。日本でも、大学生になるかどうかとは別に、18歳から22歳の若者に、普遍的にベーシックインカムを支給するというのも、一つの案ではないかと思いました。
デンマークの学生手当は、「社会的投資」の観点から正当化されているようですが、日本でも導入すべきではないでしょうか。見習いたいものです。
それにしても、デンマークでは大学入試がないのですね。人口が500万人程度、という小国であるから、学校での成績で大学に進学する際の順位を決めることができるのかもしれないですけれども、それで不満はないのでしょうか。学校でいい成績を採らないと、挽回できないのでしょうか。
大学入試がなければ、その準備のための塾も必要ないですね。日本では塾が教育の重要な機能を担っているので、若者に対する社会的投資の観点からいえば、まず「塾代バウチャー」が必要になると思います。