■見田宗介は消費社会に対する見解を変えた

 



 

山本理奈「現代社会論の課題」『思想』20238月号

 

山本理奈さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 雑誌『思想』の本号の特集は、「見田宗介/真木悠介」です。

見田先生は、1937年生まれ。 202241日に逝去されました。改めて、心よりご冥福をお祈りいたします。

 見田先生は『現代社会の理論』(岩波新書)で消費社会論を展開したのですが、その後、この本の増補版で、考え方を改めたのですね。

初版では、「自由な市場システムをとおしてであっても、自然収奪的でなく、他社会収奪的ではない仕方で、情報化/消費社会化を永続することは可能なはずである」、と見田先生は書きました。

 しかしのちの増補版では、そのような可能性に「人間は永久に依存しつづけることはできないだろう」として、21世紀の課題は、「〈自由な社会〉という理念を手放すことなしに、現在あるような形の「成長」依存的な経済構造=社会構造=精神構造からの解放の道を見出すということ」だというのですね。

 最近、「脱成長」ということが語られています。しかし脱成長というのは、GDPに代えて、HDI(人間開発指標)を用いて社会の繁栄を考えようという発想を、否定しないですね。私たちは、自然収奪的ではなく、他社会収奪的ではない仕方で、HDIを考えることができるでしょうか。これがいま、見田先生の問題関心を引き継ぐうえで、重要な論点であると思いました。


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