■この世界を作り変えるためのビジョン






ジャック・アタリ『新世界秩序』山本規雄訳、作品社

山本規雄さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

ジャック・アタリは久々に本格的な本を刊行されましたね。世界秩序の青写真を描こうというこの野心的な頭脳に、心から敬意を表します。
アタリの構想では、世界議会は、三院制が望ましい、とされます(309)。まず「国家代議院」。これは各国の利益を代表する議会ですね。
次に、「世界市民議会」。個々の世界市民を代表する議会ですね。「世界市民議会の議員数は1000人で、同一規模の選挙区に再編された世界市民によって、五段階にわたる間接普通選挙で、世界政党が提出する名簿の順位に従って選出される。議院の任期は五年である」と。この世界市民議会は、各国の首相を指名する権利を持つ、というアタリの考え方も興味深いです。これをどのように正当化するのか、そして運営するのか、は難しい課題ですけれども。
最後に「長期企画院」。将来世代、および人類以外の生物界を代表する機関です。これは魅力的なアイディアです。ノーベル賞受賞者などから構成して、任期は十年。超長期の計画を立て、そこから20年の長期計画を立てて、法案を提出してもらう、というのですね。これはとても面白いアイディアで、一国の議会でも、このような「長期企画院」に法案を提案してもらうことを実現できるかもしれないですね。まずどこかの国で実現しないと、世界議会でも実現は難しいでしょう。
この他にも、魅力的で実際的なアイディアがたくさん提起されています。世界政府にむけて、私たちがなすべき課題を明確に示しています。世界市民は何をすべきか。この本から学ぶべきことは多いです。


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