■「良心の自由」はゼクテから生まれた






大西晴樹『海洋貿易とイギリス革命』法政大学出版局

大西晴樹さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 これまでほとんど研究されとこなかったバプティスト派の貿易商人のW・キッフィンという人物に焦点を当て、たいへん興味深い歴史叙述になっています。
 思想史的に興味を引くのは、イギリスで「良心の自由」がどのように生まれてきたのか、です。「良心の自由」は、ウェーバーの用語では「ゼクテ」の一つである、バプティスト派に淵源しているのですね。
 ウェーバーは「プロ倫」で、「国家による良心の自由の成文法的保護を権利として要求した最初の教会の公文書は、おそらく1644年の(特殊恩寵説をとる)バプティスト派の信仰告白44条だろう」と記しています。けれどもこれを検証してみると、正しくは、1646年に出されたその修正版だというのですね。
 近代国家の立憲主義の思想は、権力者が教会を支配するモデルに代えて、権力者が教会活動における「良心の自由」を守るように義務付けるということから生まれますが、それを最初に推進したのは、キッフィンの指導する、特殊恩寵説に立つバプティスト派だったというのですね。ジョン・ロックとキッフィンの関係についての研究も、興味深く読みました。

このブログの人気の投稿

■「天」と「神」の違いについて

■リップマンは新自由主義の立役者

■ウェーバーの「権力」概念を乗り越える