■10年後に新しい「コンドラチェフの波」がやってくる


 

小林大洲介『スマートフォンは誰を豊かにしたのか』現代書館

 

小林大洲介さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 本書は、現代書館のシリーズ「いま読む!名著」の一冊で、シュンペーターの古典的な名著『経済発展の理論』を読む際に、これを現代のスマートフォンの発展に即して読み解くという、きわめて現代的な意義のある企てになっています。

まず、このモチーフがいいですね。古典と現代を往復するというこのスタイルは、経済学史研究が企てるべき、直球の挑戦であります。シュンペーターの先見性が、現代によみがえります。

 コンドラチェフの波に即していうと、第一次の波は、産業革命、第二の波は、鉄道の記述革新、第三の波は、電気・化学・自動車などの技術革新、第四の波は、1930年代のフォード式大量生産、第五次の波は、1980年代以降のコンピューターなどの技術革新となります。私たちが生きる現在は、この第五の波のなかにあるのですね。

1980年代以降の40年間は、消費者物価数の指標づくりに参照する商品として、コンピューター関係が増えています。パソコンが消費者物価指数の品目に加わるのは、2000年なのですね。2003年にはパソコン用プリンタ、2005年にはDVDレコーダー、2013年にはスマートフォン、などなど。こうした商品が、誰もが所有しうる基本財(ニーズ)になった。

 このコンドラチェフの波が約50年単位でやってくるとすれば、次の波は2030年以降になるでしょうか。そう考えると、いま私たちの経済は、あるコンドラチェフの波の最後の10年間であり、それは例えば、一つ前のコンドラチェフの波と比較すると、1970年代のような状況にあるのかもしれません。

 


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