■行政サービスの信頼を高めには

 




 

橋場典子『社会的排除と法システム』北海道大学出版会

 

橋場典子さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 

 事例として、元受刑者のNさんに対するインタビューが、とても印象に残りました。インタビュー当時、40代後半の方です。

 「正直なところ、弁護士さんからこの団体(NPO法人)の話を聞いたときは、なんだか胡散臭い話だなと。正直、そう思ったよ。怪しい話だな、とね(笑)。」

 「熱心だったのさ。弁護士が。だから、半分義理みたいな感覚だったかな。」

 「実は、最初はあまり乗り気じゃなかった。でも弁護士さんが熱心に、ここ(NPO法人)が紹介されている新聞記事を持ってきてくれて。その新聞を見て、あぁちゃんとしているところかなと思ったよ。それでお願いすることにした。」・・・

 この他、元ホームレスの方々に対するインタビューの紹介も、とても興味深いです。

 法が信頼されるためには、NPO団体が、弱者を支援する必要がある。その際、ちゃんと相手の目を見て話すこと、そして家族のように受け入れること、こうした人間関係の構築が、法サービスを支えるということですね。

 プロボノとして活動する弁護士の皆様に、大いに期待を寄せたいですが、しかしコストや情報提供の面で、壁にぶち当たっているのが現実です。これをいかにして解決していくか。これは法にかぎらず、行政サービス全般を、市民のみなさまに、いかに信頼して利用してもらえるのか、という問題でもあります。現場で働く方々の意識、思考態度、実践的なコミュニケーション術、モチベーションなど、こうしたさまざまな要素が、法の正当性を陰で支えている。そしてこれらの要素は「イデオロギー」という観点からも重要であることが分かりました。大いに刺激を受けました。

 


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