■大学による解雇権の濫用について
寄川条路さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
大学教員を解雇する際に、それがたとえ法的に不当であったとしても、大学側としてはその教員に対して、お金を十分に払ってやめてもらうほうが得である、ということがあるのですね。
本書には、以下のように記されています。
「顧問弁護士と相談した[明治学院大学]副学長は、「定年までの賃金の半分を支払えばよいから、8000万円から9000万円くらい、解雇が無効だとしても、1億円から1憶数千万円の和解金を支払えば済むことだ」と豪語していた。こんな生々しい話もしっかり録音されていて、保有資産が総額で1000億円を超える明治学院大学らしい話になってきた。」(5-6頁)
実際の裁判の結果は、大学は解雇権を濫用したもので、解雇は無効である、となったのですね。ただし、大学側による授業の無断録音は、その授業を行った教員(教授)の人格権を侵害するものではなく、この点では慰謝料は認められなかった、ということですね。
また、裁判費用は教員が三割、大学が七割を支払うということになった。これはつまり、裁判は教員側の「七割勝訴」となったと(9)。
その後、裁判は、高裁において和解にいたり、和解金5000万円で、教授が退職することになったのですね。しかし裁判の費用も生じますから、この和解金は少ない額であったように思います。
もし大学当局が教授に対して謝罪しないということであれば(つまり大学側の謝罪によって教員の名誉を回復するのでなければ)、和解金はさらに高額になったのでしょう(14)。
大学側が、大学教員の講義を盗聴するというのは、あってはならないことですが、しかし実際には、学生が録音していることもあるでしょう。その録音が別の人に聞かれることもあるでしょう。
本質的な問題は、どんな講義をしたら、懲戒解雇に値するのか、ということです。大学側は大学教員に対して、「言論の自由」という権利を、どこまで保障すべきなのか。場合によっては、教員の言論に対して指導することも正当なのか。こうした問題をもっと知りたいと思いました。