■伝統消費型の都市とは
出口剛司/武田俊輔編『社会の読解力〈文化編〉』新曜社
武田俊輔さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
倉沢進は1968年の研究で、社会学のシカゴ学派をベースにして、「伝統消費型都市」について論じたのですね。
例えば徳島市のように、かつては城下町・門前町・宿場町という機能をもっていて、ところが近代化によって、何か新しい産業が生まれたわけではなく、行政機関や大企業の支店が設置されるのみで、それでなんとか栄えている、という都市があります。
新しい大きな産業がないので、多くの人々は、伝統的な暮らしを営んでいます。商業部門を支配しているのは、旧名望家層です。そこでは「町内会」が伝統行事を行う上で機能していて、「家連合」とか「全体的相互給付関係」というものによって特徴づけられるというのですね。
こうした伝統消費型の都市は、前近代的な人間関係を残しているとみることもできますが、しかし近年では少子化対策(衰退への対応)として、地元の教育機関などと連携して、コミュニケーションを拡張する動きがあるのですね。そのような動きは、近代的なコミュニティの理想モデルの一つになるでしょう。これを発掘する研究は意義深いと思います。