■子守歌には悲しみが詰まっている
遠藤薫編『戦中・戦後日本の〈国家意識〉とアジア』勁草書房
遠藤薫さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
軍歌と子守歌の関係についての考察を興味深く読みました。
子守歌というのは、日本では結構新しいのですね。しかも悲しい内容で、どうも子どもを寝かせるための唄というよりも、唄う側が自分の人生の悲哀を昇華するために作られたような側面があります。
夕焼け小焼けの赤とんぼ・・・、にしても、そこで想定されている子守り役のお姉さんは、15歳で誰かの嫁になって去っていった。そういう悲しさがテーマになっている。
子守歌は、戦前は歌謡曲としてレコード化され、ヒットしているのですね。なかでも赤城の子守唄はいいですね。
しかししだいに、軍国化とともに、子守唄の内容が検閲されるようになる。子守唄を通じて、当時の母たちは、自分の子どもを戦地に送ることの悲哀を唄うようになるからです。
それにしても不可解なのですが、当時の母たちは、やがて自分の子どもを戦地に送ることになるだろうと想定して、しかも息子は帰ってこないだろうという前提でもって、子守唄を唄っている。すでに戦況が悪化していて、もう勝ち目がないということが、子守唄に反映されていたということでしょうか。子守唄がマイナーコードで歌われることにも関係しているかもしれませんが、不思議で悲しいです。