■『六法』を読むな、『資本論』を読め

 


出口一雄/小石川裕介編『法学者たちと出版 戦後日本法学の知的プラットフォームをたどる』弘文堂

 

森元拓さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

本書所収のご高論、「法学メディアと「党派性」――『法律時報』と『ジュリスト』」を興味深く拝読しました。

 法学界には『法律時報』と『ジュリスト』という、二つのメジャーな雑誌があります。

『法学時報』は、戦後、マルクス主義的、革新左派系の雑誌になった。

これに対して『ジュリスト』は、実務家のための実務的な雑誌として、戦後に創刊されたのですね。

 『法律時報』は、法学界のコモンセンスを構築する同人誌になった。ということは、戦後の法学界の主流は、革新左派だった、ということですね。

 その当時(戦後から1980年ごろまでか?)は『六法全書』よりも、マルクスの『資本論』が優先された、というは興味深いです。

 「潮見利隆は、大学院に入った際、指導教員の川島武宜[1909-1992]から、一年間は六法を開くな、と言われたという。そして「六法全書の代わりに岩波の『日本資本主義発達史講座』[1930]をこの一年間によく読め、それにもう一つ…『資本論』を読め、と言われた。」」(179)

 このように教育の現場で、何を読め、何を読むな、という指示でもって、弟子たちの思想形成を操作していたというのは、いまでは考えられないですね。しかしこうした読書の指導が、当時の革新左派の思想と運動を支えていた、というのは興味深い事実です。


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