■ウェッブ夫妻『消費組合運動』の影響力


内務省研究会編『内務省 近代日本に君臨した巨大官庁』講談社現代新書

 

白木澤涼子さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 明治6(1873)から1947年まで続いた内務省を、徹底的に明らかにしようという本です。内務省の仕事を、現在の政府の部門に置き換えてみると、旧自治省(総務省の一部)、都道府県知事、警察庁、消防庁、旧運輸省(国土交通省の一部)、旧厚生省(厚生労働省の一部)、・・・などです。さまざまな仕事を、一つの省でこなしていたのですね。

 その意味で内務省の発展は、近代日本の行政の発展でもあります。

 興味深いエピソードは、1906年に結成された報徳会の機関誌『斯民〔しみん〕』が、1946年まで40年間続くのですが、この雑誌は「国家に貢献すべき精神」を育むことを狙いとしていたのですね。といっても、精神的なことばかりではなく、この雑誌には「海外の自治資料」を伝えるコーナーがありました。そのコーナーの執筆を担当した人(複数かもしれない)のペンネームは、イギリスの経済学者、シドニー・ウェッブの名前を日本語でもじって、「人見植夫(ひとみ・うえお)」とされたのですね。

 実際、内務省の要人、安井英二と三好重夫は、ウェッブ夫妻の『消費組合運動』に影響を受けていたのですね。強制的な消費者組合である「市町村会」が、教育、衛星、水道、ガス、電気などの消費を、ナショナル・ミニマムの公共事業として提供すべきだ、という考え方なのですね。1925年に邦訳されたウェッブ夫妻の『消費組合運動』は、日本で重要な意味を持っていたことが分かりました。


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