■課税制度と企業行動の関係について
櫻田譲さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
まずこの本の表紙と裏表紙の写真がいいですね。表紙は、ネオワイズ彗星、裏表紙は、北大のポプラ並木を前景とした星の動き(とくに北斗七星)です。いずれも櫻田先生が撮影したのですね。すばらしい作品です。
彗星を撮影するときに、カメラに内蔵されているアストロレーサーによって、対象を自動追尾することができるのですね。それでこのような美しい写真が撮れるとは、いいですね。
そしてこの本の最後に、彗星の話が出てきます。ネオワイズ彗星が今度地球に接近するときは5,000年後です。そのときの会計や税のシステムに思いをはせるというのは、ロマンがありますね。研究というのは、まさにこのような時間の流れのなかで進みます。5,000年後を展望する。このような感覚は、櫻田先生の研究のスタイルにも表れているでしょう。
本書の内容についてコメントします。
一般に、研究開発費を増額すれば、そしてその比率を増やせば、企業は長期的に成長するだろうと言われます。しかし研究開発費の比率が高すぎると、投資家はかえって悲観的になるでしょう。反対に、この比率が低いと、投資家たちは、今後はその比率が高くなると期待できる、と楽観するかもしれません。本書の第一章は、そのような仮説を実証しています。
興味深いのは、企業の研究開発比率が高くなるのは、借入金が少ない場合だ、ということです。他方で、取締役会の構成メンバーの平均年齢が高くなると、研究開発費が上昇するのですね。より長期的な観点から会社の将来を考えることができるようになる、ということですね。
「ふるさと納税」については、納税する人の関心が、しだいに子育て支援や災害復興支援から遠ざかってきた、ということが実証されています。
私は昨年、「ふるさと納税2.0」という論稿を、『税務弘報』(2024.11.)に寄せました。ふるさと納税は、子育て支援という目的をもった方向に、制度全体を修正していくべきだ、と考えています。
すでに子育て支援のための施設を十分に作った自治体は多いと思いますが、今後は例えば、教育クーポン制度(塾への補助)を導入するための資源として、ふるさと納税を位置づけることもできるかもしれません。