■財政規律をルール化した国々


横田正顕編『財政規律の比較政治経済学』有斐閣

 

加藤雅俊さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 オーストラリアは、1998年に、予算公正憲章法(charter of Budget Honesty Act)を制定して、健全な財政を憲法でルール化したのですね。すなわち、財政リスクの管理、国内貯蓄の確保と循環的景気変動への対応、税負担水準の安定性、税体系の整合性、将来世代への配慮、の五つをめぐるルールです。

ジョン・ハワード(John Howard)が率いる保守連合政権は、1996年から2007年までの12年間、オーストラリアの政権を担当しました。

それ以前の労働党による財政悪化を克服するために、保守連合政権は、財政ルールを作ったのですね。さらに対米同盟強化、厳格な移民・難民政策(太平洋解決策)、多文化主義への批判などの立場をとりました。経済的に安定した成長をもたらしました。

 この財政の憲法化は、元々、ジェームズ・ブキャナンが提唱した考え方です。21世紀に入って、いろいろな国で導入されるようになりました。例えば、・・・

 

ドイツ:2009年、ドイツは基本法を改正し、財政赤字をGDP0.35%に制限し、州政府の財政赤字を禁止する「債務ブレーキ」を導入した。

スイス:2001年に憲法上の債務ブレーキを導入(2003年施行)。これにより、景気循環に合わせて調整された均衡財政が義務付けられる。

ポーランド:1997年憲法は、公的債務がGDP60%を超えるような財政的義務を負うことを禁止している。

スペイン:2011年に憲法を改正し、国レベルおよび地方レベルの両方で均衡財政を義務付け、2020年から財政赤字の上限を定める。

イタリア:2012年に憲法に均衡財政に関する条項を追加し、財政構造の均衡を義務付けた。

フランス:2008年に憲法第34条を改正し、公共部門の財政収支の均衡を目標に盛り込んだ。

スロベニア:2013年に憲法に均衡財政条項を盛り込んだ改正案を承認し、2015年に施行された。香港:基本法(第107条)は、予算を均衡させ、GDP成長率に比例させることを義務付けている。

 

などです。

 オーストラリアでは、しかし2008年のリーマンショックを受けて、緊急の財政出動をしています。財政規律は破られようですね。

 財政規律のルール化は、恐慌が起きると、社会福祉の水準を悪化させるでしょう。しかしこれをルール化しない場合、反対に、経済の安定的な成長が見込めないかもしれません。では、どのような財政規律と財政政策が望ましいのか。各国の対応とその成果を評価することで、日本の財政政策を考えていくヒントになるでしょう。


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