■大学教員の解雇を無効とする判決について
志田陽子さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
「大学当局が教授に無断で授業を録音し、無断録音を告発した教授を解雇した」という事件について検討した本です。
2016年10月、明治学院大学は、教養センターの教授を解雇した。ところがその後、裁判で敗訴して、この解雇は無効になった。どこに法的な問題があったのか。志田先生の担当された章の論述が、詳細に示しています。
この論述は、かなり時間をかけて、解雇の無効性の根拠を体系的に示しています。不当解雇された先生を救うために、周到な論理が展開されています。この論述の営みに、心より敬意を表します。
いったい同大学では、慣例的に、教員の許可を得ずに講義を秘密録音(盗聴)していたというのですね。そしてそれを告発した教員を解雇した。大学の権威やキリスト教を批判から守るため、というのがその行為の理由であったようですが、裁判では結局、和解は成立せず、2018年6月28日に大学側の敗訴が確定しました。
前例として、鹿児島国際大学における教員解雇の事件がありました。福岡高判判例集(2006年10月27日)にその記録が収録されています。一審・二審とも、大学側の解雇は無効とされ、最高裁は上告を棄却しました。この事件では、教授三名が懲戒解雇されたのですが、大学院・新学部開設をめぐって、教員のあいだにさまざまな意見があるのは当然であり、改革事業に反対意見を述べたとしても、それをもって改革事業の妨害を狙ったということはできない、という趣旨の判決がでました。
「学問の自由」「享受の自由」「表現の自由」をめぐって、批判者にも耳を傾け、事務手続きにおいても金銭においても相応のコストを支払い、寛容に対応する。このような営みの大切さが、裁判を通じてあらためて確認されたのですね。