■経済成長とプライバシーの相克

 



 

梶谷懐/高口康太『キャッシュレス社会と宗教』相国寺教化活動委員会

 

相国寺教化活動委員会さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 中国におけるキャッシュレス化は、電子貨幣に対する信頼度を格段に高め、それによって「待ち時間を短縮する」ことに資している。「高速な生活」のための条件を整えていることが分かります。

 例えば毎朝、家で朝食を食べるのではなく、まず地下鉄に乗って、スマホのアプリでケンタッキーの朝食を注文する。そしてケンタッキーについたら、待ち時間なしで、朝食の弁当を受け取る。

あるいは類似のサービスで、「お持ち帰り」の食事を注文すると、所定の時間に、下駄箱のような保温ボックスに中にそれが入っている。アプリを操作して、保温ボックスを開けて受け取る。このように、電子貨幣とアプリを使ったサービスが進化しています。

 情報のプライバシーについては、侵害される可能性があります。しかしそんなことはあまり気にしないで、サービスの効率化を優先すると、経済が成長するということでしょう。逆に言えば、経済が成長するためには、情報のプライバシーが制約されても平気だという人たちが増えなければならない、と思いました。

経済成長の要請にあわせて、プライバシーの価値が変容していくというは、一つの進化論的な適応行動の表れかもしれません。反対に、プライバシーを重視する社会は、経済成長が低迷するかもしれません。中国経済の壮大な実験から、私たちはいろいろ学ぶことがありそうです。


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