■表現の自由をめぐる裁判

 




 

寄川条路編『表現の自由と学問の自由――日本学術会議問題の背景』社会評論社

 

寄川条路さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

序章の末木文美士(ふみひこ)論文「「学問の自由」は成り立つか」の記述で、はじめて以下のことを知りました。

明治学院大学で起きた「表現の自由」をめぐる裁判(第一審、東京地方裁判所、寄川教授の解雇を無効とする判決、慰謝料の請求は認めず)は、その後、双方が控訴して、東京高裁で裁判の審議が続いていました。しかしその審議の過程で、201911月に和解が成立したのですね。

和解条件は、大学側が無断に講義を録音していたことを謝罪する一方、寄川先生は解決金をもらって退職する、ということだったのですね。寄川先生としては、こうした和解による解決は必ずしも本意ではなかったようですが、事情の詳細については公開されていないということですね。裁判が長引くと、双方にとって不利な結果になる。そのような判断があったのではないかと推測します。

 はたして大学における講義内容は、通常の「表現の自由」の範囲を超えて保護されるべきなのか。例えばある会社員が、自社の理念を批判したら、会社にとって不利益な行為をしたという理由で、処分を受ける場合もあるでしょう。「内部告発」としての「表現の自由」については、すでに一定の手続きを経なければ保証されないようになりました。「学問の自由」という理念は、個々の大学の自治の自由として解釈されることがあります。この場合、大学の自治の権利という観点から、大学は、大学の理念に賛同しない教員を解雇することもできるでしょう。

 これは私の素人的な推測であり、誤りがたくさんあるのではないかと恐れますが、「表現の自由」「学問の自由」、そして無断で録音されないという「プライバシーの権利」について、私も自分なりの考え方を築いていく必要があります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


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