■環境派リベラルの投資を促すには

 



 

遠藤業鏡『CSR活動の経済分析』中央経済社

 

遠藤業鏡さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 この本のなかで独自の実証分析の結果が示されています。大まかに結論のみ記しますと、日本では企業が利潤を上げるために、戦略的な仕方で環境に関するCSR(corporate social responsibility(企業の社会的責任))のスコア(指標)を改善することに意味があるのか、といえば、統計的に有意な結果は得られなかった、ということですね。

 CSRのスコアに対して、企業は消極的になる必要はなく、戦略的にCSRを改善する必要があると、経済倫理的には言えるかもしれませんが、しかし戦略的に改善したところで、利潤が出るわけではない。これは日本の企業に対する日本人その他の評価がまだ成熟していないから、ということでしょうか。

 環境を重視したほうが儲かるような仕組みを築くには、人々の企業評価の成熟を待つのではなく、政府や国際機関が、一定の強い道徳的メッセージを発していく必要があるのかもしれません。あるいは、諸外国の取り組みから日本人が学ぶべきことがあるとすれば、それは何でしょうか。

これまで企業の倫理は、株主重視のリバタリアニズムか、それとも広範なステイクホルダーを重視する民主主義か、という対比で語られてきました。しかし環境倫理の観点からすれば、その中間あたりで、環境倫理的なパフォーマンスを高めるためのインセンティヴを模索したり発見したりする工夫があるのではないかと思いました。

 


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