■クロポトキンの新訳、決定版
ピーター・クロポトキン『相互扶助論 進化の一要因』小田透訳、論創社
小田透さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
長文の「訳者あとがき」を読みました。とても力強くて感銘を受けました。
「わたしたちは、自分自身を疑うだけでなく、わたしたちの創造的な潜勢力を信じてもよいはずである。なぜなら、相互扶助の感性も実践も、自然の贈与だからだ。」(431)
相互扶助の実践は、創造的な潜勢力の発揮を必要とする、人間にとってすぐれた倫理なのですね。
このたびは、クロポトキンの『相互扶助論』(1902)の新訳の刊行を、心よりお喜び申し上げます。
少し前に大杉栄の「初訳」の新版(新漢字・新仮名遣い版)が刊行されて、その時に私はこの本を読みましたが、この翻訳は補遺を訳していないなど、いろいろな不備があったのですね。その後、大沢正道が1970年に新たな訳を『クロポトキンI』として出したのですが、これは絶版状態が続いていたと。
今回、クロポトキンの引用の誤りまで確認して翻訳された意義は、大きいと思います。
翻訳を通じて、小田さまが、クロポトキンに惹かれる理由が、エミール・ゾラの『パスカル博士』に登場するパスカルと似ているから、というのは興味をそそられました。この本、読んでみたいと思います。