■10億円以上の資産は没収という北一輝の案
大野達司/森本拓/吉永圭『近代法思想史入門』法律文化社
森本拓さま、ご恵存賜りありがとうございました。
北一輝は、『大綱』のなかで、国民によるクーデターが必要だと書いています。財閥や官僚などの政権中枢を麻痺させて、明治維新の革命の本来の意義を取り戻すべきだと。
具体的に、彼のいう革命とは、次のような企てです。三年間憲法を廃止して戒厳令を発令する。男子普通選挙を実施する。国家改造議会を召集する。憲法改正を行う。貴族院や華族制度を廃止する。表現の自由を保障する。等々。
経済について北一輝は、社会主義を理想としました。
例えば個人は、土地を含めた一定規模以上の財産をもつことはできない、という政策を掲げます。しかしその場合の財産の限度は、100万円とする、というわけで、当時の100万円とは、いまの10億円程度にあたるといわれますから、これは実質的には社会主義的ではないでしょう。
10億円以上の個人資産を持ってはいけない、というのは、確かに過激かもしれませんが、資本主義を否定するほどのものではないですね。むしろ資本主義を健全な姿に戻す政策案といえるかもしれません。