■新自由主義がもたらした統治術






正村俊之編『ガバナンスとリスクの社会理論』勁草書房

正村俊之さま、執筆者の皆さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 新自由主義による規制緩和によって、多くの行政サービスは民間の業者に委託されるようになりました。これはコーポレート・ガハナンスの進化が可能にした統治の形態ですね。行政セクターは、民間セクターが自律的に運営できているかどうかについて、チェックできるシステムを整備していきました。これには「内部コントロール」と「外部コントロール」があるわけですが、いずれにおいても「リスク管理術」と「モニタリング術」と「情報技術」の進化がみられた。これらの手段によって、ガバナンスの技術は、公的領域と私的領域の両方で相互浸透可能な仕方で発展していくことができた。
 行政側は、それまでの業務アウトソーシングする一方で、そのリスクを管理するようになった。こうした「リスク管理技術」こそ、実は新自由主義がもたらした新しいガバナンスであったのですね。新自由主義とは、実際には政府を「小さな政府」にしたというよりも「新しいガバナンス形態」をもたらした、というのが正しい。そしてそれがある程度まで成功したわけですね。今日、新自由主義に反対するかどうかの試金石は、例えば体育館や図書館の運営のアウトソーシングに反対するかどうか、という点にあるかもしれませんね。

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