■どんな投票制を採用すべきか
松本雅和『公共の利益とは何か 公と私をつなぐ政治学』日本経済評論社
松本雅和さま、ご恵存賜りありがとうございます。
大変すぐれた教科書(テキスト)だと思います。簡潔でありつつ、内容が濃く、知的に興味深い事柄がたくさん詰まっています。
投票で、「一票の測られ方」の正統性を考えるとき、できるだけ死票を無くすのか、それとも、政権を担う政党の交代可能性を高めるように配慮するのか。民主主義の理念の根幹にかかわる問題が生じますね。
これと、一票の「インテンシティ」をどのように政治に反映させるか、という問題もあります。たとえば、選択肢(立候補者)に対するランキング評価(誰が一番よくて、誰が二番目によくて、というランク)を投票できるようにするとか、あるいは複数票を用いて、人々は各自、分散して投票できるようにするような仕組みです(127)。この点で、会社法89, 342条が参照されている点が、参考になりました。
こうした複数投票制を実施する場合、人々が戦略的に行動することが問題となりますね。人々は、「本心」としては「あいまいな意思」もっているに過ぎないかもしれません。ところが投票する場合、そのようなあいまいな意思を裏切って、熱狂的な仕方で、一人の候補者にすべての複数票を投じるかもしれませんね。
こうした戦略的な投票は、もちろん一票の場合にも生じるでしょう。自分としてはどちらの候補者でもいいのに、どちらかに投票する、ということが起きるわけです。