■貨幣ポイントが溜まる「新しい公共」に向けて
西部忠さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
本書の結論部分は、「グッド・マネー」と呼びうる最近の地域通貨について紹介しています。地域を活性化するために、1%のプレミアムを付けて地域通貨を発行する一方、一年後には減価するように工夫する。するとその貨幣は地域経済の活性化につながります。加えて、このような地域通貨は、その地域のコミュニティ・アイデンティティ意識を高め、人々の帰属感を高めることにも資するでしょう。
問題はしかし、現在の法制度の下では、このような地域貨幣は、3年間以内の流通に限定しなければならないという、期限がついているのですね。この期限を延長するためには、特別な申請をして承認される必要がある。ですが最近では、そのような事例はあまりないようですね。
日銀の貨幣とともに地域通貨が流通すると、これは貨幣の複数化と呼ぶことができます。しかし地域通貨の価値が日銀貨幣にペッグしているかぎり、貨幣は複数になっても、取引コストはあまり高くないでしょう。地域通貨がデジタル貨幣になれば、取引コストはさらに下がるでしょう。
はたして「脱国家通貨」といえる地域通貨、つまり日銀貨幣にペッグしない地域通貨の発行が許される日が来るでしょうか。そのような脱国家化された地域貨幣が、コミュニティ意識を高めるという段階が訪れるでしょうか。訪れたとして、それはどのような経済効果をもたらし、どのような意味での「グッド・マネー」になるでしょうか。そのようなことに関心がわきました。
いまのところ、ある地域で、携帯電話のあるアプリを利用してたくさん歩いたことを証明すると、地域通貨のポイントが溜まる、という取り組みがあるようですね。これは地域の観光を刺激するもので、つまり地域にお金を落としてくれるであろう観光客に、観光することに対して貨幣的なインセンティヴを与えるものですね。
こうした発想を拡大して、図書館や体育館を利用したら貨幣ポイントが溜まるとか、そのポイントを誰かに贈与できるようにするとか、あるいはSNSと連動させてローカルな言説を盛り上げていくとか、いろいろなアイディアが生まれます。