■東京五輪音頭、建国音頭、増産音頭を聴いてみた
遠藤薫編『現代日本の〈国家意識〉とアジア 二つの東京オリンピックから考える』勁草書房
遠藤薫さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
1964年に開催された東京オリンピックで、最も有名になった曲は「東京五輪音頭」だったのですね。三波春夫のバージョンが最も人気だったそうですが、他にも、橋幸夫、坂本九、北島三郎・畠山みどり、大木伸夫・司富子、つくば兄弟・神楽坂浮子などが歌いました。しかし三波春夫のレコードは、130万枚も売れたのですね。すごいです。私もYouTubeで見ましたが、いいですね。
当時は、「東京音頭」も流行っていました。この曲は、元々は、1932年に、丸の内の界隈の旦那衆が、丸の内のための盆踊りの曲を、西条八十と中山晋平のコンビに発注したということですね。つまり元々は、丸の内のための曲だった。ところが翌1933年に、歌詞を変えて、東京音頭としてリリースされたのですね。興味深いです。
東京音頭は、戦時中に流行ったわけですが、その当時は政府もまた、いろいろな音頭を発注して作っていた。例えば、「東京祭」「選挙音頭」「建国音頭」「増産音頭」などです。しかしどれも、成功しなかったようですね。これに対して東京音頭は、旦那衆の遊び心で作られたから、人びとの間で広まったと。興味深いです。
「建国音頭」(唄:小唄勝太郎、市丸、楠木繁夫)を、私もYouTubeで聴いてみました。歌も作曲もとてもいいですね。しかしそれでも流行らなかった。
https://www.youtube.com/watch?v=NFm7-oEVrf0
「増産音頭」(波岡惣一郎・鈴木正夫・小唄
勝太郎・市丸・山本麗子)は、1943年に作られていますが、これもいい曲ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=q3gIrRspm1Y
増産することや、戦争することに対して、まったく緊迫感がない。庶民の感覚で受け入れられるようなものとして歌われている。不思議な感覚になりました。しかもこれらの曲は、いずれも東京音頭を作曲した中山晋平が作ったのですね!
建国とか増産といったテーマが、庶民的な曲として作曲依頼されていたこと。しかもその曲のクオリティが高いこと。それでも流行らなかったこと。戦争を遂行する日本政府の狙いに、改めて恐ろしさを感じました。