■ドゴールの中道政治


吉田徹『居場所なき革命 フランス1968年とドゴール主義』みすず書房

 

吉田徹さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 以前にお送りいただいた本ですが、改めて拝読しました。

本格的な政治研究の書です。ここまで掘り下げて研究すると、見えてくるのは、ドゴール大統領(任期は、①194463 - 1946120日、②195918 - 1969428日)というのは、たんなる中道の政治家ではなく、保守と革新という二極の要求を、うまく両立させていくところに、その政治手腕があるのだと思いました。

「ドゴール主義」から私たち日本人が学ぶべきは、なによりも「国民投票(レファレンダム)」の意義でしょう。ドゴールは任期期間中に、五回も国民投票を実施したのですね。共和制憲法の制定、アルジェリア民族自治権付与、アルジェリア休戦協定、大統領の直接選出、地方化と上院の改革。これらの国民投票で、かなり政治の仕組みを変えたのですね。

1968年は、学生運動のピークでした。当時のフランスにおいては、大統領も政権も、学生運動も野党勢力も、だれも事態を把握できないという、権力の空白状態だったのですね。そうしたなかでドゴール大統領は、労働組合の要求を大幅に受け入れていく。実際には、労働組合の力はそれほど大きくなかったのですが、それでも学生と労働者が共に戦うことで、労働者の最低賃金の引き上げや、時短などが認められていく。

その時のドゴールの政治的手腕を、どのように説明するのか。本書の分析を面白く読みました。

当時の左派の要求は、理想が高すぎた。自分たちの要求を、どうやって現実的な政策に落とし込んでいくのか、そして社会を機能させるのか。見えていなかった。そうしたなかで、労働者たちがストライキをすることは、大きな社会的ロスだった。

ドゴール大統領は、左派知識人たちが抱く理想とは別に、「下からの民主的要求」をうまくくみ上げて、労働者たちの「生活に基づく要求」を実現していく。しかも労働者が労働へのインセンティヴを保てるようにした。そのような政治手腕を発揮したのですね。


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