■追悼チック・コリア(Mourning Chick Corea)
追悼チック・コリア
ジャズ・ピアニストのチック・コリア氏が、2021年2月9日、79歳で生涯を閉じました。死因は、新種のがんであったようです。さらなる活躍を期待していたのですが、残念でなりません。心から、お悔やみ申し上げます。
私にとってチック・コリアは、特別な存在でした。アルバム『SEPTET』(1985年)は、私にとって人生を変えるほどの衝撃がありました。
私は大学生のころ、チック・コリアのエレクトリック・バンドの曲を、ジャズ研のバンドでコピーして演奏していたことがありました。ギターを演奏していました。しかしこのコピーバンドの活動とは別に、たまたま大学祭で、中古レコードが売られていていたのですが、そのときに買ったレコードの一枚がSEPETです。
このアルバムを聴いて、私は鳥肌が立ち、そして自分を恥じました。大学で「こんなことをしている場合ではない」という気持ちになり、焦燥感に駆られました。このアルバムによって、それまでの生活とは明らかに違う精神の次元に、足を踏み入れたような気がします。
SEPTETのCDは、ながらく廃盤のようで、数年前に私は中古でCDを買いました。YouTubeでは現在、聴くことができないようです(以前は聴くことができました)。
中古CDで改めてSEPTETを聴くと、私が大学生の当時に受けた衝撃が蘇ります。いま聴いても、すばらしいアルバムです。SEPTETのレコードの方は、いまも手元にあります。そのジャケットは、大いなる力を発しています。私にとって「座右の書」ならぬ「座右の盤」でありつづけています。
1980年代のチック・コリアは、エレクトリック・バンドと、アコースティック・バンドという二つのスタイルで、さまざまなアルバムを出していました。どちらのスタイルの音楽も、私は好きです。
それ以前の1970年代には、名盤のReturn to Foreverがありますね。チック・コリアにはさらに、My
Spanish Heartという、スペイン音楽を極めたアルバムもあります。しかしSEPTETは、さらにそこから、イランの都市エスファハーンにある古城をテーマにした曲を含んでいます。チック・コリアはこのアルバムで、イスラムの精神を我がものとしているようにみえます。そして私が最も惹かれるのは、このイスラムの精神に入り込んだチック・コリアの境地です。