■李沢厚は、中国の丸山眞男

 




 

王前「中国の現代哲学」『世界哲学史8』ちくま新書、所収

 

王前さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 中国の最近の哲学に関する充実した紹介になっています。

現代の中国に重要な哲学があるとすれば、それはすでに日本でも翻訳されているのではないかと思いますが、意外に翻訳がありませんね。

 しかし中国には、日本の丸山眞男のような存在がいます。丸山と同時期に活躍した李沢厚です。私はこの人の思想に関心をもちました。カントからヘーゲル、マルクスにいたる流れを研究して、しかし文革という困難な時期に、自らの思想をどのように表現するのかという問題を抱え、そこから格闘した。李は、人間の主体性を強調するときに、美学に訴えたのですね。すると1980年代の中国で、美学がブームになったというのですね。

 李の著作『美の歴程』は、主著といえるでしょうか。同時期のマルクス主義のなかでは、マルクーゼの『エロス的文明』が、シラーの美学に依拠して、新しい創造的な資本主義を展望しました。李は、マルクス主義の枠のなかで、可能なかぎり自由に思考する。そのような形式を、美学に見出したというのですね。


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