■ロールズの軍隊経験
齋藤純一/田中将人『ジョン・ロールズ』中公新書
齋藤純一さま、田中将人さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
ロールズの若い頃と晩年の人生の紹介に、刺激を受けました。
ロールズは大学卒業後、陸軍に入隊して、太平洋戦線に投入されるのですね。1943年のことでした。日本軍との戦いのなかで、あるときロールズは、ヘルメットを脱いで小川で水を飲もうとすると、銃弾が頭をかすめたというのですね。それでロールズの頭皮には擦り傷が残ったと。これは生死を分かつ、強烈な体験であったと思います。
日本との戦争は1945年8月に終わりを迎えますが、しかし日本軍の一部(山本奉文〔ともゆき〕の部隊)は、ルソン島のジャングルで潜伏を続ける。ロールズはその山本を連行する特別な任務に、自発的に従事したのですね。
そして興味深いことに、日本のその部隊には、山本七平もいたと。しかも山本七平は、ロールズと同い年だったのですね。
その後、ロールズは、米国占領軍の一員として日本を訪れ、原爆を投下された広島を訪問しています。この体験も、後のロールズの思想に大きな影響を与えることになったでしょう。