■市場の力を利用した消費者の保護
丸山千賀子『消費者問題の変遷と消費者運動 改訂版』開成出版
丸山千賀子さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
本書は、消費者問題に関する決定版のテキストです。情報が豊かで、整理されています。
消費者被害額の推計は、毎年の消費者白書に掲載されますのですね。それによると、2013年の消費者被害・トラブル額は、約6.0兆円。なんとGDPの1.2%なのですね。驚きました。
その後、2018年には6.1兆円というピークを迎え、2020年には3.8兆円に減っています。これは大きな減少ですね。対策に成果があったのだと思います。
消費者への被害は、たんに法を整備すればよいとか、罰金を高くすればいいというのではなく、業界ごとに自主的な基準を作って、その基準をさまざまなステイクホルダーによって監視してもらうのがよい、ということですね。
実際、2000年代以降は、そのような方向で法と社会の連携が進んでいる。本書はこれを「市場の力を利用した消費者の保護」と呼んでいます。
市場の力というのは、まず自主規制です。そしして監視の担い手が、行政や司法ではなく、取締役会、株主、投資家、消費者、消費者団体、取引先、競争事業者、などのアクターによって、それぞれの仕方で行われるようになった(149)。その意味で、市場の担い手たちが倫理を引き受けるようになった、と言えそうですね。