■半導体産業を国家が導くには

 



 

高乗正行『ビジネス教養としての半導体』幻冬舎

 

高乗正行さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 本書は、いま問題になっている半導体市場について、その歴史と実態をコンパクトにまとめています。分かりやすいです。

 韓国や台湾では、半導体産業は国策として、政府が大規模に産業政策を主導しました。これに対して日本では、1990年代後半あたりから、国が主導する経済産業政策が全般的に機能しなくなり、国家は産業を育成するリスクを取らなくなりました。その当時、日本で半導体産業に名乗りを上げたのは、新日本製鉄などの鉄鋼メーカーだったのですね。しかしそれが失敗してしまう。

 新日本製鉄は、1998年に事業を撤退します。そのときのコメントに、「高い授業料だった。価格変動の激しさや、製品の世代交代の速さなど(鉄鋼業と)違いすぎた」と述べたそうですね(26)1,000億円の赤字を出したと。

 半導体のような市場は、やはり国家主導で開拓する。国家がリスクを引き受けて、産業をコーディネートする。そうすべきだったのだけれども、日本はできなかった。本当は、優秀な国家官僚が現れて、日本全体で優秀な人材を抜擢するような仕組みを作らないといけなかった。ではそれが日本にできなかった。いま私たちは、日本の産業政策に何が必要なのかを見極めたいものです。

 


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