■おそまつさんのテーマはベルーフ、呼びかけられたいという願望




大澤真幸『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』角川書店


大澤真幸さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 最初からかなり面白く、引き込まれました。早稲田大学でのサブカル講義をまとめたものなのですね。
 シンゴジラで問題になっているのは、日本が対米従属を乗り越えられるか、ということ。ゴジラが現われた場合に、自衛隊がまずどのように対応すべきか、という問題があり、そして次に、アメリカに助けを求めるのか、という問題がある。こうした問題をリアルに描いていというわけですね。
 「おそまつさん」で問題になっているのは、ニート。
資本主義というのは、構造的に失業者を生んでしまうというのが古典的なマルクス主義以降の問題ですが、ニートは、働けるのに働かない、という選択肢を選んでしまう。
 でもおそまつさんたちは、本当は就職したいと思っていて、就職活動はする。でも「やっぱりだめだな」という感じになって、それで仕事が見つからなくても悩んでいるわけではない。ニートである自分を受け入れて、自分で自分を笑いものにする。そこが面白いわけですね。
 おそまつさんのような人たちを、資本主義システムの観点からどのように位置づけることができるのか。マルクス的な発想ではダメで、そこでウェーバーのいう「ベルーフ(天職=職業)」、職業倫理にもとづく資本主義の精神に引きつけて解釈することができる、というのですね。「ベルーフ」というのは、神から呼ばれているということ。資本主義の社会で就職する、職を得るということは、その職に自分が呼ばれているということである。おそまつさんたちは、「本当は呼びかけられたいな」と思っている。けれども呼びかけられない。
 いまの若者たちは、「社会に役立ちたい」と思っている。そういう意識傾向が、以前よりもずいぶん強くなっている。これも「呼びかけられたい」という意識として解釈できるかもしれません。呼びかけられたいけれど、自分はまだ呼びかけられていないぞ、という、いまの若者たちの欲求構造に、おそまつさんは訴えるものがあるのかもしれません。


このブログの人気の投稿

■「天」と「神」の違いについて

■自殺願望が生きる願望に反転する

■ウェーバーvs.ラッファール 「プロ倫」をめぐる当時の論争