■自己責任よりも成長する義務を負う






フランソワ・シャネ『不当な債務』作品社、長原豊、松本潤一郎訳、芳賀健一解説

訳者の皆様、ご恵存賜りありがとうございました。

金融権力は、負債を負わせることによって、世界を支配します。支配している側には、相応の責任が課されなければなりません。
具体的に、ギリシアの金融を支配しているヨーロッパの諸銀行は、どのようにしてギリシアを救済することが相応しいでしょうか。
この問題に対して、芳賀先生の解説は、貸し手責任の観点から、次のように説明します。
JALの再建のさいに、貸し手は債権の8割を放棄した。しかし残りの2割は、回収できる見込みがあったので、貸し手は追加の融資をした。
では類似の方法で、ギリシアからその債権を放棄させることができるでしょうか。するとギリシアは、担保にしていた領土を奪われることになるのではないでしょうか。実際、ギリシアの空港は、外国の民間企業に売却されてしまいました。
こうした方法には限界があるでしょう。だから選択肢は、ギリシア経済を再建する、再生するという方向でしか考えられない。債務を大幅に棒引きして、金利を上げて、返済期間を延長して、経済復興のための追加融資をする。このように「成長志向」でもって債務と負債の関係をリフォームする以外にない。
負債を抱えるということは、たんにそれを返済する責任だけでなく、返せない状態になったら、そこから成長してもらうという、成長の義務を負うことになる。破産して終わり、という自己責任原則は通用しません。これが資本の論理であり、再建計画の基本であるということかもしれません。


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