■無雙真古流の存続の危機






井上治『慈照寺と無雙真古流』相国寺教化活動委員会

井上治さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

「無雙真古流」とは、慈照寺にまつわる華道の流派で、江戸時代に始まりましたが、いま、存亡の危機にあるというのですね。慈照寺が発行していた免状が途絶えて、弟子の養成もないのだと。慈照寺は、相国寺派のお寺なので、その責任は相国寺が負うだろうというわけですね。
「六華」には「池坊」という権威があるけれども、ところが「生花」という新しい領域には、そのような権威というものがない。18世紀になって新しい流派がたくさんできた。そのなかに無雙真古流もあった。
無雙真古流は、当時は新しい流派だったので、自分のルーツを探して、それを権威づけようとした。この流派は、源氏を流祖としてかつぐのですね。けれども源氏をかついだ流派は、ほかにもたくさんあった。
無雙真古流はまた、珠阿弥や徳大寺義門といった人物に、重要な役割を与えて、正統な権威を作り出そうとした。この流派として存続できなくなるのは、弟子が育たなくなったからでしょうか。それは正統性の構築に問題があったのでしょうか。あるいは正統性は、いつでも再生できるのかもしれません。


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