■「自分を信頼しなさい」――エマソン哲学入門






斎藤直子/木村博美『「自分を変える」ということ』幻冬舎

斎藤直子さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 本書の表紙に「アメリカの偉大なる哲学者エマソンからの伝言」とあります。エマソンから何を学ぶことができるのか。対談形式の哲学入門書になっていますね。
 エマソンは、アメリカのニューイングランドで、代々続く牧師の家に生まれました。ハーバード大学の神学部の大学院を出て、最初は牧師になります。ところが因習にとらわれた教会に満足できません。29歳のときに教会を批判して、エマソン家の伝統と教会をいずれも捨ててしまう。これはラディカルな反抗であり、抵抗ですね。そこから「自分を信頼する」という哲学を構築していくことになる。
 そして斎藤直子先生も、実は似たような経験をされていたのですね。29歳で会社を辞めて、大学院に進学するという選択をされた。そのときにすでに、エマソンに励まされていたのだと。「自分の考えを信じて自分に正直に生きなさい」というエマソンの思想に背中を押されて、ご研究を進めてきた。「拠りどころとするのは自分しかいない」という、エマソンの言葉を励みにがんばったというのですね。
振り返ると、そのころに私は、斎藤先生にお会いしました。東大でのテイラー研究会や、ニューヨークでお会いしたことを思い出します。
 本書は、斎藤直子先生の人生経験から、エマソンにアプローチしています。このような仕方でエマソンの思想が読者に届けられることを、とてもうれしく思います。


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