■小川淳也代表のビジョン
私は最近、小川淳也さんの『日本改革原案 2050年成熟国家への道』を読んでみました。2014年に刊行された本ですが、今読んでも古く感じません。長期的な視点があり、日本の進むべき道を、ある程度まで示していると思います。この「ある程度まで」という留保を付けますが、私の批判は別の機会に譲り、以下、この本についてメモします。
本書の内容は、中道改革連合が2026年7月14日に示した「競争力ある福祉国家」の構想(中間とりまとめ)とは、やや異なるでしょう。出版からすでに12年経っていますし、また2023年には、この本のアップデート版も刊行されています。ただし現在は絶版状態(復刊を望みます)。
以下、2014年版を参照します。その前に、2026年7月14日に示された「競争力ある福祉国家」の構想(中間とりまとめ)は、以下のサイトで示されています。
この7月14日の中間とりまとめでは、「競争力ある福祉国家」という言葉が、政策の中心理念となっています。「人への投資によって、一人ひとりの自由と可能性を広げ、その積み重ねと循環を通じ、社会の安心と経済の競争力を高める国家」というビジョンです。これは、私が「新しいリベラル」と呼ぶ考えにも結びつきます。
この「競争力ある福祉国家」の内容は、2014年に刊行された小川さんの『日本改革原案』で、すでに練られています。この本は、有志たちの勉強会を通じて練った案ということですが、随所に興味深い政策提案があります。例えば・・・
・高齢者を70歳以上と定義すれば、2050年の高齢化率は32%にとどまる。65歳以上とすると、2050年に、40%が高齢者になる。(88)
・生涯現役社会を実現して、基礎年金額は、収入に応じて減じる仕組みを考える。(91)
・現在の相続の問題は、90歳代で亡くなられた方の遺産が70歳代に相続され、消費や投資に回りにくいということである。(127-128)これを解消するためには、どうすればいいのか。
・早ければ中学校の段階で、遅くとも大学生までに、少なくとも一年間、すべての日本人が海外留学する仕組みを考える。(166)
・大学院博士課程の修了年齢を引き下げる。22歳で博士号を取得できるようにする。(196)
・子どもを産むことを躊躇する最大の理由は、経済的な不安である。これが7割を占めている。(199)日本の国立大学の授業料を無償にするためには、1兆円が必要である。これは消費税0.4%分である。
・議員数の削減について、小川さんは肯定的である。「・・・最終的には衆議院で300、参議院で100程度まで定数を削減できるのではないか。参議院は今後、任命制や地域代表制を含めて多様な選択を検討して良い。」(256-257)
・地方議員の削減について。「自治体の再編が進む中、全国に6万人いた地方議員は、3万人にまで減少している。それでも他国と比較すると、人口約370万人の横浜市議会が定数86名に対して、例えば人口がほぼ同じ米国のロサンゼルス市議会はわずかに15名。議員報酬も横浜市議会が約1600万円に対して、アメリカの地方議会は実費のみの支給が原則である。」
・道州制に賛成である。道州制は、経済団体も支持している。(268)
・法人税は減税すべき、というスタンスである。そこで消費税を増税することが求められる。消費税の増税は、社会保障費の負担減のためにも必要である。
・・・
いずれも興味深いです。
ただし、本書は外国人の受け入れに賛成で、日本人も海外に出ていく(国民皆留学)べきだと主張しています。しかしもっと長期の視野でとらえると、現在のEU諸国が移民問題で揺れている現状を踏まえて、移民の受け入れ方針を検討すべきだったように思います。移民問題は、現在、大きな論点です。
本書によれば、国民の平均年齢は、1972年には32歳でしたが、2050年には53歳になるそうです。これは日本が「成熟国家」になるということなのか。いずれにせよ、将来の人口動態を見据えて国家のビジョンを考え直すべきだ、という本書の主張は、正論です。2014年版のこの本の内容を踏まえて、いま議論すべきは、2050年に12年を加えた、2062年に向けてのビジョンでしょう。そしてまた、22世紀のためのビジョンでしょう。今年(2026年)生まれた人は、2100年に74歳になります。その年まで視野に入れて政策を論じることには、大きな意味があります。
というのも、現在の人口ピラミッドで、高齢者は多数派です。もし高齢者が自分の利益を追求して再分配を要求すると、世代間で不公平な社会になってしまいます。これを避けるためには、高齢者が成熟した考え方を持って、自分の利益よりも、日本の長期的な利益を考慮しなければなりません。そして実際、多くの高齢者は、日本の将来を憂いているのだと思います。
日本はこれから、人口面で衰退しますが、私たちは、別の基準で強い誇り(プライド)を持ちたい。その希望を、どのような政策ビジョンで表現するのか。そして限りある予算を配分するのか。中道改革連合のゆくえは不透明ですが、支持者も批判者も含めて、私たちはこの本の内容を、もっと議論してもよいのではないかと思いました。