■批判的実在論を拡張する


佐藤春吉監、桂悠介/梶原はづき/筈井俊輔編『批判的実在論入門 複雑な世界を説明するためのクリティカル・リアリズムの考え方』ナカニシヤ出版

 

西部忠さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 

 ロイ・バスカーの批判的実在論は、経験的な実在の他に「超経験的な実在」がある、と想定します。「ノン・アクチュアル」な実在と呼ばれます。これは、実在の深層にあるものであり、言い換えればメカニズムであり、力であり、傾向である、とされます。

 社会科学的な説明では、ある理論を用いるときに、その理論が実在すると考えるのかどうかが問題になります。理論はたんなる仮説であって、道具であって、有用であればいい、使えるならいい、と考えるのかどうか。これは私たちが「知」を獲得する際に、実在に対してどのような態度をとった方が、うまく知ることができるのか、という問題でもあります。

 私たちは、自分の人生の目的についても無知です。ですので人生の目的に対して、何が有用で、何が道具としてすぐれているのかについても、的確な判断をすることができません。そういう場合に、社会科学において有用な理論を使う、と言っても、人生の根本的な無知を克服することはできません。しかし批判的実在論は、私たちの無知を克服するために、理論にコミットするという場面で、その価値を発揮するのでしょう。

 どういうことか。このノン・アクチュアルな実在は、私の思想(自生化主義)の観点から解釈すると、人間の実在の問題でもある。人間は、アクチュアルなものと経験的なものから成り立っているのではなく、人間という実在のなかに、ノン・アクチュアルな深層をもっている。それは潜在的可能性である。そのような人間の深層を理解することで、私たちは自分が思っている以上に、自分のこと、すなわち自分の能力(ポテンシャル)を知ることができる。批判的な実在という考え方を、このように人間にも当てはめるなら、私たちは自身の無知(自身の目的や善き生についての無知)を克服することができるのでしょう。

 そのための哲学として、この批判的実在論を受けとめました。

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毎日新聞のインタビュー記事につきまして、訂正します。

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