■国家から独立した市民意識というのは幻想か
八木紀一郎『国境を超える市民社会 地域に根ざす市民社会』桜井書店
八木紀一郎さま、ご恵存賜りありがとうございました。
2014年、北河内におけるアンケート調査では、「市民団体」「経済団体」「自治会役員」「市政・公共機関関係者」のリーダーたちにそれぞれ質問をして分析しています。
興味深いのは、「地域の将来目標」について尋ねたところ、さまざまな質問項目に関する「グループ別」の分類で、「市民団体」と「自治体役員」のそれぞれのリーダーは、ほぼ同じような意識を持っているということです。
いずれも、「健康で安全」を重視しています。そしていずれも、「創造的な地域」への関心は希薄です。261頁。「市民」というのは、自治体的・公務員的な発想とあまり区別されない、ということですね。しかも創造性がない。
ただこれは、五点、四点、三点、二点、一点、というウェイトづけによる評価を問う質問ですので、別の質問方法では差が出るかもしれません。
市民団体と自治体役員の意識がかりに同じであるとすれば、国家と市民社会の分離というのは、意識の上では現れない。どちらも共通の問題に取り組むことになる。そうなると市民社会は、国家から独立した活動領域をもつというわけでもなさそうです。
そのような印象をもちました。