■森嶋通夫の「東アジア共同体」論
西部忠編『リーディングス戦後日本の思想水脈8 経済からみた国家と社会』岩波書店
西部忠さま、ご恵存賜りありがとうございました。
戦後日本の経済思想において、重要な諸論文が抄録を含めて掲載されています。こうして集めてみると、その豊かさに思考を喚起されます。
森嶋通夫は晩年に、「東アジア共同体」の構想を提起しました。
それによると、東アジアの共同体組織では、民主的な意思決定のために、中国を五つの地域に分ける。これに加え、南北の朝鮮と、台湾を加え、そして日本は二つの地域に分けて加える。これで10の地域からなる共同体組織によって、民主的な意思決定をしようというわけですね。ただ中華圏の比率が大きいので、均衡化のためには、南北朝鮮と東西日本は、一票の重みをそれぞれ1.5倍にすることも考える、というのですね。
EUの場合、首都はベルギーのブリュッセルにあります。東アジア共同体の場合も、首都は、大国にあってはなりませんね。そのような観点から、沖縄が独立して、沖縄に首都をおくべきだというのですね。沖縄は、徳川末期までは、中国と日本の領国に属する状態にあったわけであり、日本から独立する余地があるのだとも。
またこのようにすれば、沖縄の繁栄が約束されるというわけですね。
しかしこのように、EUをモデルにして、東アジアの共同体を構想すると、かなり難しい政治的判断になることが分かります。