■自由な学習の場が政治統合を可能にする




橋爪大三郎『フリーメイソン 秘密結社の社会学』小学館新書

橋爪大三郎さま、ご恵存賜りありがとうございました。

フリーメイソンは、理神論に立脚する結社で、18世紀のアメリカでは、ベンジャミン・フランクリンも加入しています。アメリカでは38代までの大統領のうち、14人が加入していたのですね。かなり多いですね。
キリスト教がいくつにも分裂して、政治的にいろいろなスタンスをとる宗派が現われる一方、フリーメイソンは政治的に中立で、信仰を問わずにメンバーになることができた。そうした事情から、社会を統合するための政治的な機能を果たすことができたのですね。
「フリー」というのは、もともと職工組合をベースとして、そのなかでも市民と同等の権利をもっている人(税金を納めるだけの所得がある)、あるいは、特別な技術を持っているために税金を免除されている人、さまざまな労役を免除されている人、そういう身分の人たちを意味する言葉です。
秘密結社といっても、秘密というのは、握手の仕方とか、儀礼の仕方ですね。そういう内容について秘密にしても、それほど重要な事柄ではないようにみえますが、おそらく身分を問わずにだれもが会員になれる平等な組織において、結束力を高めるために必要なのでしょう。それから、フリーメイソンに入会すれば、相互学習を通じて、高めあうことができる。それは大学に行くことがまだ特権的であった時代に、人々に広く学習の場を提供したということでしょう。
そのような自由な結社、自由な学習の場を作ることが、国の政治的な統合機能を果たしたことは興味深いです。

このブログの人気の投稿

■「天」と「神」の違いについて

■リップマンは新自由主義の立役者

■ウェーバーの「権力」概念を乗り越える