■「人生に充足する」とは、いかなることか
奥村隆編『作田啓一vs.見田宗介』弘文堂
鈴木洋仁さま、ご恵存賜りありがとうございました。
作田啓一の四象限図式で、「個別主義(封鎖性)」vs「普遍主義(開放性)」、「業績本位(超越性)」vs「属性本位(内在性)」という二つの対立項の組み合わせがあります。
これで、
「業績本位の個別主義」は「貢献」、
「属性本位の個別主義」は「和合」、
「業績本位の普遍主義」は「業績」、
「属性本位の普遍主義」は「充足」、
という分類になるのですね。しかしいま考えると、この分類は奇妙です。
「貢献」とは、達成された業績に対する評価とは関係なく、むしろどれだけ尽力したのかについての評価を人格に帰属させるものであります。業績は「達成」のみを評価する(だから個別に達成を評価することもある)、貢献は「プロセス」を含めて評価する(そのプロセスを客観的かつ公平に評価することもある)、ということでしょう。業績というのは、相互に比較する際に、普遍的な基準があるわけではないですね。
「和合」とは、ある集団のなかで、自分がどのような役割を与えられているかによって、自分の属性を評価するということでしょうか。そのような属性評価がけっして「充足」を導かないというのは、とても興味深い判断です。「充足」とは、ある集団から解放されて、自らの存在を、普遍的な地平において見いだす、そのような高度な心性なのでしょうか。それはカトリック的な普遍主義の愛においても可能なのでしょうか。
「充足」の概念が、「業績」と対比されているという点も、価値観点として興味深いです。