■現代の自由を論じるために
駒村圭吾編『Liberty 2.0』弘文堂
駒村圭吾さま、宇佐美誠さま、瑞慶山広大さま、成原慧さま、西村友海さま、吉田徹さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
自由の概念を、最新の科学に照らして、バージョンアップしようという企画ですね。こうした哲学の企ては、みんなで議論することに大いに意義があると思います。とはいえ、自由論をバージョンアップするための新しいアイディアは、この本では誰も示していないように思いました。誰か新しい自由論を展開してほしいです。
新しい自由論が出てくるとすれば、この本で検討されている諸々のテーマが、たしかに重要であると思います。リバタリアン・パターナリズム、AI、ゲーミフィケーション、ニューロサイエンス、ポスト・トゥルース、ベーシックインカム、プライバシー、といったテーマです。
私たちは、政府からの自由よりも、何らかの政府介入によっていっそう自由になるような、あるいはいっそう「幸福(well-being)」を高めることができるような、そういう社会を望んでいます。その場合、「幸福」の指標をどのように構成するかという問題が、自由論にとって重要だと思います。
これまで自由論は、自律、政府介入、尊厳、選択、などとの関係で論じられてきました。でもこれからは、社会的厚生主義、AI(人工知能)、ゲーム、神経科学、陰謀論、基本所得、などとの関係で論じなければなりません。これらのテーマは、本書でとても興味深く論じられています。さまざまな問題を提起していますが、こうした議論のなかから、新しい自由論が出てこなければならないというのは、その通りだと思いました。