■これぞ社会学の醍醐味

 


 

遠藤薫『〈猫〉の社会学 猫から見る日本の近世~現代』勁草書房

 

遠藤薫さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 これは決定的な本ですね!

 猫に注目して、古代から江戸時代、そして現代にいたるまでの社会の変化を描いています。

 猫は、ある時期に中国から輸入されたのですね。江戸時代になると、都市化とともに、都市ではネズミを退治する動物として、公共財としてケアされるようになる。首輪をつないで私的に飼うようなペットとは違う存在になるのですね。

 一方で、江戸時代に消費文化が発展すると、「招き猫」がそれぞれ家に置かれるようになった。これは私有財ですね。招き猫は、しかし農村部では、「養蚕神」の役割を果たすようになった。この「猫」の役割を、「狐」の役割と比較した第四章は、とても興味深く拝読しました。

 本書は何よりも、写真や図絵がたくさん掲載されていて、遠藤先生が自分で撮影した写真も多いですね。猫にゆかりのある神社など、さまざまな場所を訪れて、写真に収めてその意義を論じるというのは、とても楽しそうです。社会学の醍醐味を感じる本でした。



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